自給自足が農業の原点

中国の米の乾燥の様子
おばあさんが米を天日干ししているところ、日本では乾燥機で米を乾燥させるが、中国の田舎ではいまだに脱穀した米を太陽の光で乾燥させている。

  思えば遠くに来たもんだ。広東省広州市から電車で22時間+バス3時間+バス1時間+バス40分+徒歩30分、やっと友達の実家に着いた。これだけ時間がかかっているのに広東省のとなりの湖南省なのだ。中国は本当に大きい。
  一般に中国は日本の30年前の世界と言われているが、ここは50年前の日本にタイムスリップしたような世界だ。家は木で柱と枠組みを作り壁が粘土を四角に固め天日で干した物を積み重ねて作っている。床は土になっている。100年前に建てられた家だそうだ。裸電球が灯り、テレビと冷蔵庫がある。テレビは衛星放送を受信している。4チャンネルしかない。
中国のパラボラアンテナ
「パラボラアンテナ」、おもいっきり錆びているところが中国の田舎らしい。家の壁は粘土を固めて天日干ししたもの。

  ここの生活はお風呂とトイレと冬寒い事が苦痛である。やかんでお湯を沸かし、お湯を体にかけて体を洗う。全身体を洗うのは3日に1回である。普段は顔と足だけ洗う。トイレは木の樽に丸太を組んだものが乗っかっている。足が入らない程度の穴が開いていて、この穴を狙ってするわけである。ここでトイレするなら、山でした方が良いということで山でトイレをした。ここは、岩手県に比べれば寒く無い所なのだが家が家なのでもろに外の寒さが伝わってくる。体を丸めて眠ってもあまりの寒さに眠れない。体に力を入れて寝ているので体が痛くなる。3日目に眠っていても寒いと言ったら布団が1枚出てきた。なんだ、布団あるじゃないか!ここに住んでる人はこれでも寒くないと言う事か?布団を1枚追加しても体を丸めないと寒い。なんとか眠れるようになった。
  中国は人口が多く、しかも農家が50%を占めているので1戸当たりの農家の農地面積は小さい。4反部(40アール)しかない。しかし、中国は共産国家なので、田んぼ、畑、山を均等に分けている。農家が自給自足できるように考えられているのである。山から雑木を取ってきて燃料として使う。植樹した大きな木は国家のものなので勝手に切ることはできない。まわりに自然に生える雑木を取って来るのである。不要な雑木を取るので自然に山を手入れしている事になる。この雑木をストーブで燃やし、暖房、調理、お湯になる。
ストーブと猫
このストーブの前で私と猫は仲良くしてました。共に寒がりです。

  食べるものは自給する。米、野菜はもちろんの事、豆腐、酒も自分で作る。中国では農家が酒を作っても良い。日本では酒税法があるので勝手に酒を作る事はできない。中国でも米で酒を作るが蒸留する。米で作った焼酎みたいなものである。たまたま私が行った時に酒を蒸留するところを見た。大きな中華なべの上に底の抜けた樽を置いてその上にまた中華なべを置いて、上の中華なべに水を入れておく。下から火を焚くとアルコールと水が蒸発して、水の入った中華なべに冷やされて水滴になり、竹筒を通って外に流れる。出来上がった酒に山で採れた薬草や漢方薬を漬け込んで正月にお客さんに振舞うのである。残った酒粕は豚の餌になる。
中国農家の酒造り
酒を蒸留しているところ、こんな簡単な構造で中国農家の酒造り。

  出来立ての豆腐は、少し甘い感じがするが中国では砂糖を入れてデザートにする。豆腐に重しを乗っけて水分を出す。豆腐と豚の血を混ぜて、おにぎりのようににぎる。陰干しをして、ストーブの煙で燻製にする。これで湖南省特産の豆腐ハムができあがる。
豆腐ハムの陰干し
豆腐ハムを陰干しにしているところ

  鶏・鴨は放し飼いにして飼う。柵なしで放し飼いしているのに猫や犬に襲われないのは不思議だ。私はウコッケイを飼っているが小屋に猫が入って、猫にウコッケイを食べられた事がある。今年は、池で鴨の雛を遊ばせていたらカラスに雛が襲われたし、ウコッケイも襲われた。カラスに襲われないように小屋の隙間をふさいで、外に出さないようにしたら、腹が減ったカラスは今度は子猫を襲っていた。日本のカラスおそるべしである。鶏・鴨はどちらかと言うと自分たちで食べるために飼っている。マル一匹しばいて頭から足まで炒めて食べる。今日は鴨を干し肉にするという。首の動脈を切って鴨に天国に行ってもらいます。熱湯に入浴させて羽をむしり取ります。羽は羽毛になるので洗って天日干しをしてから売ります。羽をきれいに取ったら内臓を取り出します。胸、腹の部分を干し易いように平らに延ばします。塩水に浸けて、天日干しをします。内臓は炒めて食べます。干し肉は寒い冬に作ります。
  豚は小さな農家でも2〜3匹飼っています。残飯と野菜くずと飼料を混ぜて食べさせます。豚は農家の大事な現金収入源です。仲買人に売る場合もありますが正月に自分で豚を解体して町の路地で販売します。日本では4つ足の動物は許可がないと殺して解体して販売することはできません。しかし、中国はもともと豚を自分たちで食べていたので許可がいらないのです。中国にもともといた品種の豚は病気に強く飼い易いのですが、脂肪が多いので安いのが欠点です。でも食の安全から考えると薬漬けの品種改良された豚よりも病気に強い昔ながらの品種が良いと思うのは私だけでしょうか?
  牛は農耕用水牛と食肉用の赤牛がいます。中国の牛は小さくておとなしい。小さいので田んぼの土手の草でも食べれます。日本の牛は大きいので田んぼの土手は狭くてうまく歩けません。おとなしいので30分おきに牛の様子を見にいけば良いのです。
  また、中国の農家は器用です。古い布を使って小さい子供の靴を作ってしまいます。
  中国の農家はのんびりしています。それは、自給自足の知恵があるからでしょう。本当にお金を使わないように生きています。電気も20元(300円)しか使いません。広州市では電気代を100元(1500円)使いますので1/5です。電話も自分からかける事はほとんどありません。子供たちには1週間に1回電話をかけるように命じておきます。基本料金の20元+αだけです。ガスも灯油も使いません。山からの水なので水道料金もありません。中国の農家の現金収入は年間で1000元〜2000元(1万5千円〜3万円)です。それでも生きています。
  中国の農家には日本の農家が忘れた自給自足が生きています。なんでも自給自足、中国の農家恐るべし。  

山羊の親子
「何、見てんのよ!メェ〜。」ヤギの親子。お父さんは白ヤギだったのでしょうか?ヤギの後ろに見えるパイプは自家用水力発電用水路です。

自家用水力発電機
自家用水力発電機です。ヤギが休んでいたところからずっとパイプが伸びています。テレビと電球が1個点くと言っていたので100Wくらい発電できると思われます。ヤギが放し飼いになっている山は人里離れていて、電気が通ってません。それで、山の急勾配を利用して水力発電です。電気まで自給、中国おそるべし。

足踏み脱穀機
「足踏み脱穀機」、日本だったら博物館行きのもの、それが普通にあるからすごい。もちろん今でも現役です。

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