医食同源の国、中国

 私が中国文化の中で良いと思ったのが「医食同源」です。"医食同源"とは「病気の治療も普段の食事も、ともに人間の生命を養い健康を維持するためのもので、その源は同じであるとする考えかた。 中国で古くから言われる(大辞林)」
中国赴任時代は、医食同源など気にかける事も有りませんでした。経済成長著しい中国には、何かビジネスチャンスがあるのではと思いました。そして、2年程前に中国の友達夫婦の所にやっかいになり中国を見て歩きました。中国の友達夫婦と食事を共にするに従って"医食同源"が解ってきました。
 中国では生きた鶏を市場で買って、その場で殺しもらい、毛をむしってもらいます。なぜ中国では生きた鶏を売っているのでしょうか?それは、病気の鶏ではない事を一目で証明できるからです。恐ろしい事に中国では病気で死んだ豚や鶏を引き取る業者がいます。冷凍してしまえば病気で死んだ豚だとはわからないでしょう。だから中国人は生きた鶏、解体したての豚肉を買います。
 毛をむしった鶏を1匹、家に持ち帰り、中国の女性は、中華包丁を使い、「ガンガン」鶏を解体していきます。中国の女性はたくましいと思います。日本の女性は血を見ることすらできない人が多いのですから。中華包丁は鶏の骨をたたき切る事ができます。解体した鶏を頭から、骨から、内臓、そして3本指の足まで中華鍋に入れます。味付けはショウガ、ニンニク、塩、ねぎを使います。科学調味料は使いません。骨からだしが出てシンプルな味付けですが美味しくなります。私がなぜ味の素を使わないのかと聞くと頭がはげると言うのです。中国製の味の素は変なものが入っているのかわかりませんが、中国人は味の素を食べるとはげると信じ込んでいます。
 鶏の頭はだしのためではなくて食べるために入っています。中国人は鶏の頭を客人にすすめます。私が日本人は鶏の頭を食べないと言うと頭が良くなるんだよと言って自分で食べ始めました。まるで犬のようです。ワイル〜ド!中国の女性は鶏の3本指の足を好んで食べます。コラーゲンたっぷりなのでお肌が良くなるそうです。でも、綺麗な女性が鶏の足を食べている姿は少し奇妙に見えます。
 市場で殺してもらった鶏は、血抜きされるため血を料理には使いませんが、中国の農村では自分たちで鶏を殺します。鶏の血を茶碗に取って少し水を混ぜかき回し血が固まったら、鶏の骨肉と一緒に炒めます。血の豆腐のような感じになります。また、湖南省では豚の血と豆腐と塩を混ぜてまんじゅうのように握り、燻製にしてハムを作ります。特別美味い訳では有りませんが腹が減っている時には大事な栄養源です。
 中国人は本当に色んな物を食べます。コレなあに?豚の胃袋。えー!これは、なあに。体に二個あるもの。あー腎臓か!日本人は豚の胃袋も腎臓も食べないと言うと中国では普通の肉よりも高いのだそうです。体に良いと言う事で人気があるそうです。中国の山奥(友達の実家)に行った時に広州よりも安かったので食べさせてもらいました。豚の胃袋は細切りにして炒めます。豚の腎臓はスライスして炒めます。う〜ん、けっこう歯ごたえがあって美味い。なぜ、日本では胃袋や腎臓はたべないのかな?と思ってしまいました。
 このように中国人は動物の命を無駄にすることなく、まるごと食べています。これが、栄養のバランスの良い食事につながっているんだと思います。私の祖父は、魚の皮・内臓に栄養があるんだとよく言って食べてました。祖父は92歳まで生きました。もしかしたら祖父の時代には日本にも医食同源の考え方があったのかもしれません。私は最近の子供は皮膚が弱くなっているように感じます。これは、魚の皮や動物の皮を食べなくなったせいでは?と思っています。
 それから、中国人は豚の骨や鶏の骨を噛み砕いて骨の中のエキスを吸ってペーと吐き出します。私は中国人はなんて汚い食べ方をするんだとずっと思っていました。私がみょうな顔をしていると、中国の友達が骨の中の栄養を吸い取っているんだと言いました。骨の内側で血が作られる。血は全身を駆け巡り体を作って行く。もしかして、骨の内側(骨髄)に大事な栄養素があるのではないかと思い始めました。そして、骨を噛み砕いて食べてみました。さすがにペーと出すのは日本人としてできなかったので噛み砕いた骨を飲み込みました。豚の骨や鶏、鴨の骨を噛み砕いて飲み込んでいるうちに歯ぐきが引き締まってきました。ガムを噛んで歯ぐきが痛くなった時は、俺も年かなと思っていたのですがどうやら不足していた栄養があったようですね!それから、熱い血が流れる時がありますし、ご飯を食べると体が温かくなります。疲れづらい体になってきました。とにかく体の調子が良いので日本に帰ってからも時々、鶏がらを買って来て骨丸ごと食べてます。指を切っても以前より直るのが早くなりました。体重も83kgから76kgになりました。骨を食べると早く満腹感が得られます。
 ところで日本人は以前より噛まなくなったと言われていますが昔の食べ物に比べて軟らかくなっているのです。中国人は歯ごたえのある食べ物が好きです。ブロイラーよりも地鶏が好きですし、砂肝のようなコリコリした所が好きです。中国の野菜は日本の野菜に比べると硬いです。ニンジンなどは切るとパキパキ音がします。
 私の知り合いに血を作れなくなる病気の人がいます。白血球が普通の人の1/5しかなくなり、無菌室の病室に入りました。病院の治療のかいあって白血球が普通の人の1/3になったので退院しました。数ヶ月して、白血球が1/4になった時に再入院を勧められたのですが知人は拒否して、日本在住の中国人漢方医師の所で治療をしました。漢方医師は前の病院の免疫抑制剤を飲んではいけないと指導したそうですし、無農薬野菜や無農薬玄米を食べるように指導しました。普通の人に比べて1/4になった白血球が1ヶ月ほどで1/3まで回復しました。漢方は副作用もないので、知人は今では漢方のとりこになっています。
 中国人はエネルギーにあふれています。そのエネルギーの根底にあるのが医食同源なんだと思います。医食同源の国、中国。中国おそるべし。

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